かほく市ママ課の独身税発言の件で考える、ネットリテラシーの重要性

かほく市ママ課の独身税発言の件で考える、ネットリテラシーの重要性

まずはじめにお伝えすることは、石川県のUIターン事業に関わっている立場ですが、その立場ではなく、FacebookなどのSNSやウェブサイトでの情報発信を担ういち情報発信担当者として今回の件を考えたいと思います。また、焦点となっている「独身税」の賛否については触れません。

何が起きたのか

事の発端は、石川県の地元紙・北國新聞に掲載されたこちらの記事です。

財務省主計官とかほく市ママ課の懇談会で「独身税」に関するやり取りがあったと書かれています。焦点となる文言はこちらかと思います。

メンバーが「結婚し子を育てると生活水準が下がる。独身者に負担をお願いできないか」と質問したのに対し、阿久澤氏は「確かに独身税の議論はあるが、進んでいない」と述べた。

内容に対し、考えるべきポイントはいくつかあると考えます。

  • かほく市ママ課が本当にこの発言をしたのかどうか
  • 「独身税」という言葉を本当に使ったのか
  • この発言の前後に何か切り取られた文脈があるのではないか

いずれにせよ、この記事の内容だけでは真実を知ることができません。そもそも北國新聞が適切な表現で発信できたのかもわからない現状です。

やってしまった削除が、燃料投下に

先の記事のタイムスタンプを見ると、8月30日の朝に更新され、新聞も同日に掲載されたかと思います。北國新聞の場合、ヤフーニュースにも転載されています。ノアネットというヤフーと共同通信デジタルが設立したネットニュース配信システムを介しているので、まばゆく間に記事は全世界に拡散されていきます。その後、かほく市は内容を否定する声明をウェブサイト配信しますが、北國新聞には動きがありませんでした。どちらを信じればよいかわからなくなったのですが、「かほく市が行った声明のウェブページとかほく市ママ課のウェブページの削除」が事態を悪化させてしまったのではないかと考えています。そこから個人アカウントが更に状況をシェアし、ネットメディアが記事化していくという負のスパイラルが発生したのでしょう。

一般的に不都合が発生した場合、その情報の拡散状況に応じて対応を考えなくてはなりません。特に初動はその後の対応に多大な影響があり、冷静に対応しなくてはなりません。今回についてはどのような動きがあったのかわかりませんが、「削除」という判断が一番よくない結果を齎すことになりました。

今回必要だったことは「説明すること」

初動でかほく市が事実と異なると発表したウェブページが無くなったことが、いらぬ詮索を生み出しました。もし、追記として経過を記載することや、出せるのであれば議事録を公開といった、状況や内容を説明することも対応としてあったのではないかと思います。

追跡班が情報を探し、まとめ、拡散していく

仮に「ウェブページを消す」としても、インターネットの世界ではウェブページがキャッシュ(一時保存)され、一定期間は残るので見られます。また、キャッシュがなかったとしても、魚拓と呼ばれるスクリーンショットは取られている可能性が高いです。炎上は当事者たちより先にまわりが騒ぎ出すため、その雰囲気を感じて保存するのです。そして、Togetterなどのまとめサイトに情報が集約されるほか、想定されるキーワードから情報をたどっていくと情報のパーツが集まり始め、まとめることでストーリーが復元、もしくは作成されています。

情報の拡散も猛スピードで広がります。外野にとってみればゴシップニュースですから、じゃじゃ馬もいれば愉快犯もいるし、(意識の有無にかかわらず)本気で炎上させようとする人もいます。こうなると、消火活動は慎重に対応しないと、鎮火を待つしかなくなってしまいます。日本の場合、匿名が好まれ、匿名だからこそ強いエネルギーでこうしたことが起こります。これはこれでたちの悪い話です。

ネットリテラシーにも地域格差

そもそもの火種がどこにあるのかはわからないのですが、いち情報発信者としては、「なぜ消した?」という思いがまず出てきました。と同時に、情報発信におけるリスク対応体制、対応のアドバイスをできる人の存在はなかったのだろうかと考えてしまいました。今やネット炎上に対する保険や、こうした案件を得意とする弁護士、アドバイザーなどが存在します。こうした対応想定は、官民問わず検討されているのですが、そもそもそういった発想がなかったのではないかと推測します。これは「ネットリテラシーの地域格差」でもあり、うがった見方にもなりますが、「ネットがあればどこでも一緒」とは言えないのではないでしょうか。情報があふれるところでないと、こうしたネット関連の変化に対応しきれないともいえます。

リテラシー教育は全職員に

さまざまな企業や芸能人などが不祥事やらなんやらネガティブなことが起きると、リスク対応アドバイザーを入れて対策を検討し、信頼のリカバリーを行っているとききます。行政も正しい情報を発信する責務があるゆえ、そのような体制や教育制度をとっていく必要があるのではないでしょうか。とてもセンシティブな内容を含む行政の情報は、人が発信する故間違いや意図と異なった形で伝わることもあるかと思います。だからこその備えが必要だと思います。

いつ当事者になるかわからない

ママ課の方々は一般の方です。地方のいち自治体のいち会議の中での発言が全国を駆け巡るとは思っていなかったことでしょう。そして逆に、この機を喜び勇んで情報拡散に必死になっている方々もいるでしょう。いつ誰が当事者になるかわからない中、私は個々の話として「自分が被害者になったときにされたくないことはしない」をお伝えしたいと思います。大変子供じみた表現ですが、今の日本は子供じみたこともわからない国民の集まりになったように思います。自分が関係なくても、冷静さをもって必要以上の行動はとらないことがいいと思っています。一方で行政としての公開・説明の責任も重要かと思いますので、経過などの報告をされることを願います。

Photo:PHOTOINDEX